TubulinTrackerチューブリン阻害剤の評価
In vitroまたはin vivoの小核試験やToxTrackerACE試験から、異数性誘発物質の可能性を示唆された遺伝毒性化合物について、TubulinTrackerは開発継続の根拠となる支援データを提供することができます。異数性は、微小管動態への干渉やオーロラキナーゼの阻害など、複数のメカニズムを介して生じ、毒物学的懸念の閾値(TTC:Threshold of Toxicological Concern)を伴うメカニズムと見なされています。したがって、非DNA反応性のメカニズムを実証することにより、遺伝毒性化合物の開発を継続できる可能性があります。そこで、TubulinTrackerは、微小管動態への干渉のメカニズムを同定し、阻害剤の種類を特定することに役立ちます。※ オーロラキナーゼ阻害の評価も行っています。詳細はお問い合わせください。
TubulinTrackerに使用するTubulin-GFP発現セルライン。被験物質への曝露4時間後の様子。A:溶媒(DMSO)、B:チューブリン脱重合の阻害剤、C:チューブリン重合の阻害剤。
技術概要
TubulinTracker技術は、Tubulin-GFP融合遺伝子を含む哺乳類レポーター細胞株を使用し、蛍光シグナルの測定により生細胞における微小管動態の定量をします。はじめに、用量設定試験を行い、評価する濃度を決定します。
A~F:Tubulin-GFPレポーター細胞を被験物質に曝露し、透過処理した上で非重合Tubulin-GFPを抽出します。 細胞内に残った重合Tubulin-GFPは、フローサイトメトリーを用いて定量されます。 同時にDNA染色を行い、細胞周期の進行に対する被験物質の影響を確認します。Tubulin-GFPおよびDNAのシグナル測定結果から、被験物質の影響を評価します。GFPシグナルは、チューブリン脱重合阻害剤(上部)により増加し、チューブリン重合阻害剤(下部)により減少します。細胞周期は、両種類の阻害剤によりG2/M期で停止されます。TubulinTrackerの開発元はToxys B.V.社(オランダ)です。
サンプルデータ(チューブリン脱重合阻害剤)
タキソール(Taxol)は、チューブリン脱重合を阻害する既知の異数性誘発物質です。TubulinTrackerにおいては、Tubulin-GFPシグナルを増加させ、細胞周期をG2/M期で停止させます。上記のデータは、Tubulin-GFPレポーター細胞を4時間にわたりタキソールに曝露した結果です。
- 1µMのタキソールに曝露されたTubulin-GFPレポーター細胞の顕微鏡像。Tubulin-GFP発現は、非曝露対照群(ここでは図示せず)と比較して増加しています。
- フローサイトメトリーに基づいた、G2/M細胞におけるTubulin-GFPの定量データです。これは、細胞内重合チューブリンの有意な用量依存的増加を示しています。
- フローサイトメトリーに基づいた、各細胞周期における細胞の割合の定量です。 タキソール曝露がG2/M期で細胞周期の停止をもたらすことを示しています。
サンプルデータ(チューブリン重合阻害剤)
ビンブラスチン(Vinblastine)はチューブリン重合を阻害する既知の異数性誘発物質です。TubulinTrackerにおいては、Tubulin-GFPシグナルを減少させ、細胞周期をG2/M期で停止させます。上記のデータは、Tubulin-GFPレポーター細胞を4時間にわたりビンブラスチンに曝露した結果です。
- 0.5µMのビンブラスチンに曝露されたTubulin-GFPレポーター細胞の顕微鏡像。Tubulin-GFP発現は、非曝露対照群(ここでは図示せず)と比較して減少しています。
- フローサイトメトリーに基づいた、G2/M細胞におけるTubulin-GFPの定量データです。これは、細胞内重合チューブリンの有意な用量依存的減少を示しています。
- フローサイトメトリーに基づいた、各細胞周期における細胞の割合の定量です。 ビンブラスチン曝露がG2/M期で細胞周期の停止をもたらすことを示しています。
TubulinTrackerがチューブリン重合阻害剤を正確に同定する能力は、既知の遺伝毒性メカニズムを有する参照化合物のパネルを用いて検証されています。 このパネルには、チューブリン重合・脱重合の阻害剤、その他の異数性誘発物質、染色体異常誘発物質、タンパク質フォールディング阻害剤及び非遺伝毒性化合物が含まれています。
Tubulin-GFP細胞を、各々の参照化合物の10濃度に4時間曝露しました。 重合チューブリンの量は、フローサイトメトリーにより各濃度で測定し、用量反応曲線の曲線下面積(AUC)を計算することにより定量しました。 相対AUCが2以上の化合物は、微小管安定化剤(Tubulin stabilizer)、相対AUCが0.5以下の化合物は微小管不安定化剤(Tubulin destabilizer)として分類されました。 オーロラキナーゼ阻害剤など、微小管の安定性に影響を及ぼさなかった参照化合物はすべて、約1の相対AUC(黒い点線)をもたらしました。
TubulinTrackerは、Toxys B.V.社の施設(オランダ)にて受託試験サービスとして提供しています。
- 被験物質の必要量:3~10mg
- 可能な溶媒:水、DMSO、PBSなど
- 納期:3週間程度
Toxys B.V.社は、新規物質の安全性評価に特化しており、遺伝毒性および生殖毒性のメカニズムについての情報を得るための一連の独自および標準技術を提供しています。同社の専門研究者は、試験計画等についてもご支援いたします。詳しい情報については、当社までお問い合わせください。
文献
論文 | |||
発表年 | キーワード | タイトル | |
2022 | TubulinTracker | TubulinTracker, a Novel In Vitro Reporter Assay to Study Intracellular Microtubule Dynamics, Cell Cycle Progression, and Aneugenicity. Geijer et al. Toxicological Sciences, 30 January 2022. | 閲覧 |
ポスター | ||||
発表年 | キーワード | タイトル | 学会 | |
2022 | TubulinTracker | TubulinTracker, a novel in vitro reporter assay to study intracellular microtubule dynamics. | ICT | 依頼 |
2021 | TubulinTracker, ToxTracker ACE | ToxTracker ACE and TubulinTracker provide mechanistic insight into the mode of action of aneugenic substances. | GTA | 閲覧動画 |
2021 | TubulinTracker | TubulinTracker, a novel in vitro reporter assay to study intracellular microtubule dynamics and cell cycle progression. | SOT | 閲覧動画 |