ToxProfiler最先端のin vitro毒性試験
- 定量化する細胞ストレス:1. 酸化ストレス、2. 細胞周期ストレス、3. 小胞体(ER)ストレス、4. オートファジー、5. イオンストレス、6. タンパク質ストレス、7. 炎症。このプロトコールにより、細胞毒性や有糸分裂誘発性も評価できます。
- 使用する7つの細胞株にはGFP融合レポーター遺伝子が含まれており、その活性化が特定の細胞ストレス応答経路に関連しています。
- すべてのレポーターは検証済みです。発現は生理的レベルであり、内因性の細胞ストレス応答を反映しています。
- 受託研究サービスでは、4週間以内に少量の被検物質(薬物:1~5mg、化学製品:10~50mg)が解析可能です。
ToxProfiler技術
細胞株とバイオマーカー
ToxProfilerはヒト肝細胞株HepG2に由来する、7種類の細胞株から構成されています。各々のToxProfiler細胞株は特定の細胞ストレスを検出するバイオマーカーを持っており、GFPとの融合タンパク質として発現しているため、GFPのシグナル強度は細胞ストレスレベルと相関しています。7つのバイオマーカーは、関連する細胞ストレスパスウェイの信頼できる指標として検証されています。
ToxProfilerバイオマーカー | |||
ストレス型 | バイオマーカー | 測定箇所 | ストレス無 / ストレス有 |
1. 酸化ストレス 活性酸素種(ROS)の生成と中和の不均衡から生じます。がん、心臓病、薬物誘発性肝障害、パーキンソン病などに関連します。 |
SRXN1 酸化ストレスに対抗するために誘導される抗酸化タンパク質。SRXN1-GFPとして発現。 |
細胞質 |
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2. 細胞周期ストレス 細胞増殖に影響を与え、ゲノムの不安定性およびアポトーシスの原因になります。DNA損傷、チューブリン重合・脱重合の阻害、細胞周期キナーゼの阻害等により引き起こされます。 |
P21 p53に依存した細胞周期停止の主なメディエーター。P21-GFPとして発現。 |
核内 |
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3. 小胞体(ER)ストレス タンパク質のフォールディングや分泌、脂質合成などの小胞体機能が損なわれている場合に発生します。薬物誘発性肝障害、がん、虚血、インスリン抵抗性などに関連します。 |
CHOP 小胞体ストレスのよく知られたマーカー。CHOP-GFPとして発現。 |
核内 |
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4. オートファジー オートファジーは、栄養不足や酸化ストレスなどのストレスによって引き起こされます。飢餓、低酸素症、化学物質で誘発された細胞損傷などに関連します。 |
LC3 オートファジーの主要な調節因子。LC3-GFPとして発現。 |
LC3陽性 オートファゴソーム |
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5. イオンストレス 細胞内イオンの恒常性が不均衡になると発生します。これにより、酵素活性が変化し、ROSまたはRNSストレスが増加する可能性があります。がん、肝疾患、神経変性疾患などに関連しています。 |
MT1X イオンストレスによって強くアップレギュレーションされ、イオンに結合することでイオンを解毒。MT1X-GFPとして発現。 |
細胞質 |
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6. タンパク質ストレス タンパク質恒常性の不均衡、高温、酸化ストレス、小胞体ストレス、重金属ストレスによって引き起こされます。がん、薬物誘発性肝障害、神経性疾患などに関連します。 |
HSPA1 タンパク質の折りたたみを助けるシャペロン。HSPA1-GFPとして発現。 |
細胞質 |
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7. 炎症 病原体などの有害な刺激に対する保護反応。炎症、薬物誘発性肝障害、アテローム性動脈硬化症、発熱などに関連します。 |
ICAM サイトカイン誘発性の炎症反応によって誘発。ICAM-GFPとして発現。 |
細胞質 |
プロトコールとワークフロー
A. 用量測定実験:① HepG2の親細胞株は、14段階の被験物質濃度に24時間曝露させます。 ② 曝露後、共焦点によるライブイメージングを用いて、(細胞数とヨウ化プロピジウムの取り込みに基づく)潜在的な細胞毒性、(DAPI染色による)有糸分裂誘発性、および自家蛍光を評価します。この情報により、ToxProfilerアッセイに適する7段階の濃度を決定し、データ解析を最適化します。
B. ToxProfilerアッセイ:③ 7種類のToxProfiler細胞株は、選ばれた7段階の被験物質濃度で24時間暴露させます。このアッセイには、陽性コントロール化合物も含まれます。④ 暴露後、共焦点によるライブイメージングを用いて、GFPレポーターのシグナルデータを取得します。ウェルあたり約500個の細胞を、細胞内レベルの解像度で可視化します。
C. データ処理とレポート作成:⑤ イメージングデータは、GFPのシグナル強度を定量化するためにデータ処理ならびに解析がなされます。各マーカーは、特異的な細胞内局部位(細胞質、核、またはフォーカス)ごとに定量化され、データがプロットされます。 ⑥ 各被験物質について、有意なレポーター誘導が観察された最小濃度(Point-of-Departure、「PoD」)を計算します。結果は、被験物質の広範な毒性プロファイル、毒性のMOA評価として記載され、また被験物質が多数の場合は、潜在毒性ランキングを記載したレポートにまとめられます。
ToxProfilerに関するウェビナー
2021年4月8日にウェビナーとして行った、ToxProfilerテクノロジーを紹介するプレゼンテーションです(英語、56分)。
サンプルデータ
① 用量測定実験
Cytotoxicity (Cadmium Chloride)
Autofluorescence (Curcumin)
C1〜C14は、濃度1〜14(薄→濃い順)を示しています。上のパネル(塩化カドミウムの細胞毒性評価):赤色の細胞は、ヨウ化プロピジウム色素を取り込んだ死細胞です。 右グラフの赤線は、塩化カドミウムのPoDであるC8を示しています。下のパネル(クルクミンの自家蛍光評価):C12以上で高い自家蛍光を示しています。
② ToxProfiler生細胞イメージング
単一濃度の陽性コントロール化合物(24時間曝露)による代表的な共焦点ライブイメージ。各化合物は、その毒性特性に応じてさまざまなバイオマーカーの発現を誘導しています。赤色の細胞は、ヨウ化プロピジウム色素が取り込まれた死細胞です。
③ GFP用量反応曲線
24時間の曝露後に陽性コントロール化合物によって誘導された7種類のレポーターに対するGFPシグナルの用量反応曲線。GFPのシグナル強度は、規定値(値= 0)および選択した陽性コントロール濃度(値= 1)で標準化され、被検物質間の比較が可能となります。
④ 解析とレポート
レポートでは、各濃度でのGFP誘導レベルが、階層的クラスター化された濃度-応答プロットヒートマップとして表示されます。これにより、試験した化合物のストレスパスウェイの誘導特性を一目で確認できます。この例では、ToxProfilerを用いることで、in vivoデータとよく相関するすべての化合物の毒性プロファイルを作成することができました。
Toxys B.V.(オランダ)は、委託研究サービスとしてToxProfilerを提供しています。小分子、複雑な混合物、ナノ材料、その他の試験品は、短期間で評価できます。この技術は、社内使用に向けたライセンス取得も可能です。 詳しい情報については、当社までお問い合わせください。
文献
ToxProfiler関連論文 | ||
発表年 | 詳細 | |
2021 | Towards an advanced testing strategy for genotoxicity using image-based 2D and 3D HepG2 DNA damage response fluorescent protein reporters. Braak et al. Mutagenesis. 2021 August | 閲覧 |
2021 | Dynamic activation and cross talk between the Nrf2 and NfκB pathways upon exposure with soft electrophiles. Braak et al. Ready for submission 2021. | 依頼 |
2019 | System Microscopy of Stress Response Pathways in Cholestasis Research. Schimming JP, Braak et al. Methods Mol Biol. 2019; 1981:187-202. | 閲覧 |
2019 | A systematic analysis of Nrf2 pathway activation dynamics during repeated xenobiotic exposure. Bischoff et al. Arch Toxicol. 2019 Feb;93(2):435-451. | 閲覧 |
2018 | Dynamic imaging of adaptive stress response pathway activation for prediction of drug induced liver injury. Wink et al. Arch Toxicol. 2018 May;92(5):1797-1814. | 閲覧 |
2018 | Systems Microscopy Approaches in Unraveling and Predicting Drug-Induced Liver Injury (DILI). Niemeijer et al. 2018 In: Chen M, Will Y (eds) Drug-Induced Liver Toxicity. Springer New York, New York, NY, pp 611-625. | 閲覧 |
2017 | High-content imaging-based BAC-GFP toxicity pathway reporters to assess chemical adversity liabilities. Wink et al. 2017 Mar; 91(3):1367-1383. | 閲覧 |
2017 | Comprehensive Landscape of Nrf2 and p53 Pathway Activation Dynamics by Oxidative Stress and DNA Damage. Hiemstra et al. Chem. Res. Toxicol. 2017, 30, 4. | 閲覧 |
2016 | Activation of the Nrf2 response by intrinsic hepatotoxic drugs correlates with suppression of NF-κB activation and sensitizes toward TNFα- induced cytotoxicity. Herpers et al. Arch Toxicol. 2016 May;90(5):1163-79. | 閲覧 |
2014 | Drug-induced endoplasmic reticulum and oxidative stress responses independently sensitize toward TNFα-mediated hepatotoxicity. Fredriksson et al. Toxicol Sci. 2014 Jul; 140(1):144-59. | 閲覧 |
2014 | Quantitative high content imaging of cellular adaptive stress response pathways in toxicity for chemical safety assessment. Wink et al. Chem Res Toxicol. 2014 Mar 17;27(3):338-55. | 閲覧 |
2012 | Automated analysis of NF-κB nuclear translocation kinetics in high-throughput screening. Di et al. PLoS One. 2012; 7(12):e52337. | 閲覧 |
2011 | Diclofenac inhibits tumor necrosis factor-α-induced nuclear factor-κB activation causing synergistic hepatocyte apoptosis. Fredriksson et al. Hepatology 2011 Jun;53(6):2027-41. | 閲覧 |
ポスター | ||
発表年 | タイトル | |
2023 | Evaluation of the extended ToxProfiler MAX assay for mitochondrial and mechanistic toxicity assessment. | 依頼 |
2023 | Toxicological Activity Profiling and Potency Ranking of Per‐ and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) Using ToxProfiler. | 依頼 |
2022 | Validation of the ToxProfiler reporter assay for toxicological profiling and determination of the underlying mode of action. | 依頼 |