ReproTracker®
最先端のin vitro発達毒性試験
- 胚性中胚葉、内胚葉、外胚葉系統を代表する心筋細胞、肝細胞、神経系細胞へと分化する途中にあるヒト多能性幹細胞 (hiPSC)を使用
- 高感度 (85%) かつ高い特異度 (84%) にて催奇形物質を同定
- 従来の in vivo アッセイ結果との強い相関
- 発生毒性メカニズムへの洞察を提供
- 既知の催奇形物質・非催奇形物質に対しては検証済み
- 少量の化合物 (通常 20~100 mg) にて試験可能
ReproTracker®で心筋細胞、肝細胞、神経ロゼットへの hIPSC 分化の模式図。
技術概要
- 被験物質の評価に最適な濃度を決定するために、未分化hiPSC を用いて用量設定試験を行います。
- hiPSC は、5 段階濃度の被験物質および陽性・陰性の対照化合物の存在下で、心筋細胞、肝細胞、および神経細胞に分化させます。 細胞分化の過程は、定量PCRによるマーカー遺伝子のmRNA発現定量及び細胞の形態観察によって評価されます。 正しく分化した心筋細胞は拍動を、肝細胞は円柱状の形態を、神経細胞は神経ロゼット様構造を示します。
- 被験物質の催奇形性は、バイオマーカーの発現パターンと細胞の形態に基づいて評価されます。
ReproTracker®で使用するバイオマーカー
心筋細胞 | |||||
マーカー | 測定方法 | 用途 | 測定日 | 分化の評価 | 毒性の評価 |
OCT4 | qRT-PCR | 多能性マーカー | D0, D7, D14 | ● | |
BMP4 | qRT-PCR | 中胚葉マーカー | D0, D7, D14 | ● | ●(D7) |
MYH6 | qRT-PCR | 心筋細胞マーカー | D0, D7, D14 | ● | ●(D14) |
拍動 | 鏡検 | 心筋細胞の形態 | D14 | ● | ●(D14) |
TNNT2* | IHC | 心筋細胞マーカー | D14 | ● |
肝細胞 | |||||
マーカー | 測定方法 | 用途 | 測定日 | 分化の評価 | 毒性の評価 |
OCT4 | qRT-PCR | 多能性マーカー | D0, D7, D21 | ● | |
FOXA2 | qRT-PCR | 内胚葉マーカー | D0, D7, D21 | ● | ●(D7) |
AFP | qRT-PCR | 肝細胞マーカー | D0, D7, D21 | ● | ●(D21) |
細胞形態 | 鏡検 | 肝細胞の形態 | D0, D7, D21 | ● | ●(D21) |
ALB* | IHC | 肝細胞マーカー | D21 | ● | |
HNF4a* | IHC | 肝細胞マーカー | D21 | ● |
神経系細胞 | |||||
マーカー | 測定方法 | 用途 | 測定日 | 分化の評価 | 毒性の評価 |
OCT4 | qRT-PCR | 多能性マーカー | D0, D7, D13 | ● | |
PAX6 | qRT-PCR | 神経ロゼットマーカー | D0, D7, D13 | ● | ●(D7) |
NESTIN | qRT-PCR | 神経ロゼットマーカー | D0, D7, D13 | ● | ●(D13) |
神経ロゼット形成 | 鏡検 | 神経ロゼットの形態 | D13 | ● | ●(D13) |
PAX6* | IHC | 神経ロゼットマーカー | D13 | ● |
*アッセイの開発時に確認済み
サンプルデータ
hiPSCの分化と細胞種の確認
未処理のhiPSCを心筋細胞に分化させた例。A: hiPSC を mTeSR1 および BEL 培地で培養し、特定の成長因子を添加することにより 14 日間かけて心筋細胞に分化させました。 B:分化が進むにつれて、多能性マーカーOCT4のmRNA発現量が減少し、中胚葉マーカーのBMP4および心筋細胞マーカーのMYH6のmRNA発現量が増加しました。完全に分化した心筋細胞は TNNT2 タンパク質を発現し、拍動の形態を示しました。
用量設定試験
用量設定試験の代表的な結果。 20段階の濃度に希釈した各被験物質にて、未分化hiPSCに対する毒性を評価します。 20 ~ 40% の細胞毒性を誘発する用量を、本実験の最高濃度として選択します。 あるいは、溶解できる最高濃度を使用します。 細胞毒性が検出されない場合は、1 mM、1 mg/ml、または 0.1% を最高濃度として用います。 薄緑色部分の濃度は、各化合物に対して選択された用量を示します。
ReproTracker®本試験(催奇形物質の例:サリドマイド)
ReproTracker®でhiPSC をサリドマイドに曝露すると、心筋細胞マーカーのMYH6と肝細胞マーカーのFOXA2、AFPのmRNA発現量が大幅に減少しました。同様に、サリドマイドは心筋細胞の拍動を著しく低下させ、肝細胞の形態に障害を与えました(A、B)。一方、神経ロゼットでは形態にもマーカー遺伝子のmRNA発現パターンにも影響を与えませんでした(C)。サリドマイドは、ReproTracker®で幹細胞の心筋細胞と肝細胞への正常な分化を阻害し、アッセイ基準に基づいて、催奇形物質として判定されました。mRNAデータの点線は、催奇形性の閾値を表示しています。
ReproTracker®本試験(非催奇形物質の例:サッカリン)
サッカリンへの暴露は、マーカーのmRNA 発現パターンにも、分化した細胞の形態にも有意な影響を与えませんでした。 ReproTracker®アッセイの基準に基づいて、サッカリンが非催奇形物質であると判定されました。mRNAデータの点線は、催奇形性の閾値を表しています。
ReproTracker®のバリデーション
評価した化合物の代表的な結果
従来技術との比較 | |||
モデル | 真度 | 参考文献 | |
ReproTracker® | 85% | Jamalpoor et al. Birth Defects Research 2022 | 閲覧 |
Mouse EST | 78% | Seiler et al. Nat Protoc. 2011 | 閲覧 |
Whole embryo culture | 67% | Augustine-Rauch et al. Birth Defects Research 2010 | 閲覧 |
Micromass | 70% | Wilk-Zasadna et al. Int J Mol Sci. 2009 | 閲覧 |
ReproTracker®のバリデーションには、様々な作用機序を持つ100以上の化合物が使用されました。これらの化合物は、従来のin vivo発生生殖毒性(Developmental And Reproductive Toxicology、略:DART)アッセイで陽性または陰性と判定しているものです。バリデーション試験の結果、ReproTracker®はin vivo DARTアッセイとの相関を85%の確率で示しました。これは、Mouse ESTなどの他のin vitro技術よりも相関性が高いといえます。ReproTracker®とDARTの結果の不一致(赤字の化合物)の理由は不明ですが、催奇形性に関してin vivo DARTが偽陽性または偽陰性の結果を示した可能性があります。
ReproTracker®は、Toxys B.V.の施設(オランダ)にて受託試験サービスとして提供しています。
- 被験物質の必要量:20-100mg
- 可能な溶媒:水、DMSO、PBSなど
- 試験能力:1 週間あたり最大20化合物
- 納期:試験開始から報告書の提出まで8~10週間
同社は、新規化合物等の安全性評価に特化しており、遺伝毒性や発生毒性のメカニズムについての情報を得るための同社独自の技術ならびに標準技術を提供しております。研究目標に応じて、試験のデザインの調整が可能です。詳しい情報については、当社までお問い合わせください。
hiPSCから分化した心筋細胞の拍動。
文献
論文 | ||
発表年 | 詳細 | |
2023 | Integration and application of new approach methodologies in assessing the developmental hazards: Case study with an antimalarial drug. Demarta-gatsi et al. (2023) | 閲覧 |
2022 | A novel human stem cell-based biomarker assay for in vitro assessment of developmental toxicity. Jamalpoor et al. Birth Defects Research, 1– 19 (2022). | 閲覧 |
2022 | Beyond AOPs: A Mechanistic Evaluation of NAMs in DART Testing. Front. Rajagopal et al. Toxicology. 4:838466. | 閲覧 |
その他 | ||
種類 | 詳細 | |
ポスター | Capturing complex biology is critical for accurate in vitro prediction of developmental toxicity, 2024 | 閲覧 |
ポスター | ReproTracker: a Human Stem Cell-Based Biomarker Assay for in vitro Assessment of Developmental Toxicity. Presented at SOT, 2022. | 依頼 |
ウェビナー | ReproTracker as an in vitro alternative to animal models for developmental toxicity testing. 10th March, 2022 | 依頼 |