
NOMADバイオセンサー:
GPCR新世代スクリーニング技術
- 対象GPCRの標識は不要
- 単一のアッセイでCa2+、cAMPまたはDAGの動態およびβ-アレスチンのリクルートメントの同時測定が可能
- アッセイ系のZ’値が高く、S/N比の高いHTS(384ウェルプレート)に適合
- プロトコールが簡便で化学色素や特別な試薬は不要
- 化合物の活性は蛍光強度またはバイオセンサーの細胞内局在により評価可能
- 標準的な測定装置を使用可能
NOMADバイオセンサーの分子
A. NOMADバイオセンサーの構造:図に示すとおり4つの部位から構成されています。不活性状態では細胞膜に局在し、センサーの種類に応じて結合ドメインが異なります。蛍光は、緑色または赤色のいずれかを使用できます。
B. NOMADバイオセンサーの種類:4種類があり、それぞれ細胞内のcAMPフラックス、Ca²⁺フラックス、DAGフラックス、または標的GPCRによるβ-アレスチンリクルートメントを検出します。同一細胞内には、1種類または最大2種類まで発現させることが可能です。
C. 検出メカニズム:不活性状態のNOMADバイオセンサーは、細胞膜(CM)に局在しています。センサーの結合ドメインが特定タンパク質と結合すると、構造変化が生じ、バイオセンサーは蛍光を発するとともに、細胞内小胞の膜(VM)へと移行します。この結果、GPCRの活性化は、蛍光シグナルの増加またはNOMADバイオセンサーの細胞内局在によって検出されます。
- セカンドメッセンジャーを検出するバイオセンサー: 結合ドメインに特定のトランスデューサータンパク質が結合
- β-アレスチンのリクルートを検出するバイオセンサー: 結合ドメインが活性化されたGPCRのβ-アレスチン結合部位に直接結合
細胞株A:標的GPCRの刺激により、Gタンパク質(G)を介して細胞内のセカンドメッセンジャー(cAMP、Ca²⁺、またはDAG)の濃度が上昇します。セカンドメッセンジャーのトランスデューサータンパク質(T)がNOMADバイオセンサーの結合ドメインに結合し、これによりNOMADバイオセンサーは蛍光を発し、細胞内小胞へ移行します。
細胞株B:刺激された標的GPCRはβ-アレスチン結合部位を露出し、そこにNOMADバイオセンサーが結合します。その結果、NOMADバイオセンサーは蛍光を発し、標的GPCRとともに細胞内小胞へ移行します。
細胞株C:同一細胞内で2種類のNOMADバイオセンサーを同時に発現させた例です。「N1」はセカンドメッセンジャーの変化を、「N2」はβ-アレスチンのリクルートメントを検出します。N1とN2は異なる波長の蛍光を持つため、単一のアッセイで、試験化合物によるGタンパク質経路およびβ-アレスチン経路の変動を同時に評価できます。
サンプルデータ
NOMAD細胞株P70735(無標識ヒスタミンH1受容体を発現)および2種類のNOMADバイオセンサー、Ca²⁺Nomad(緑)とβ-ArrestinNomad(赤)を用いて取得したデータです。A:P70735を10μMヒスタミンで刺激したところ、Nomadプローブの蛍光強度が増加し、細胞膜から細胞内小胞への局在変化が確認されました。B:マイクロプレートリーダーによる全体蛍光強度の解析。Ca²⁺バイオセンサーでのEC50は2.90×10⁻⁸ M、β-ArrestinバイオセンサーでのEC50は1.03×10⁻⁶ Mでした。C:ハイコンテントバイオイメージャーによる細胞内局在変化の解析。Ca²⁺バイオセンサーでのEC50は3.86×10⁻⁸ M、β-ArrestinバイオセンサーでのEC50は6.93×10⁻⁷ Mでした。
文献
NOMAD関連論文 | ||
発表年 | 詳細 | |
2025 | Development of a succinyl CoA:3-ketoacid CoA transferase inhibitor selective for peripheral tissues that improves glycemia in obesity. Dakhili et al. iScience. 2025 Apr 3;28(5):112336. doi: 10.1016/j.isci.2025.112336 | 閲覧 |
2024 | Initial Exploration of the In Vitro Activation of GLP-1 and GIP Receptors and Pancreatic Islet Cell Protection by Salmon-Derived Bioactive Peptides. Currie et al. Mar Drugs. 2024 Oct 30;22(11):490. doi: 10.3390/md22110490 | 閲覧 |
2024 | Comprehensive characterization of the neurogenic and neuroprotective action of a novel TrkB agonist using mouse and human stem cell models of Alzheimer’s disease. Charou et al. Stem Cell Res Ther. 2024 Jul 6;15:200. doi: 10.1186/s13287-024-03818-w | 閲覧 |
2022 | Machine Learning for Discovery of New ADORA Modulators. Puhl et al. Front Pharmacol. 2022 Jun 22;13:920643.doi: 10.3389/fphar.2022.920643 | 閲覧 |
2020 | Delta 9‐Tetrahydrocannabinolic acid alleviates collagen‐induced arthritis: Role of PPAR-gamma and CB1 receptors. Palomeres et al. Br J Pharmacol. 2020 Jul 8;177(17):4034–4054. doi: 10.1111/bph.15155 | 閲覧 |
2018 | Nomad Biosensors: A New Multiplexed Technology for the Screening of GPCR Ligands. Mella et al. SLAS Technol. 2018 Jun;23(3):207-216. doi: 10.1177/2472630318754828. Epub 2018 Feb 7. | 閲覧 |